
- 時間ばかりがかかる、そんな疲労感を感じる会議に参加したことはありませんか。どうにかしたいと思っているけれど、日々の業務に追われるばかりで、その方法を変えるところまで手が回らない…。

これは「成果の見える化」と「会議の生産性の向上」を図ることで解決できます。それには、ファシリテーションが必要です。生産性の高い会議では、実は事前準備や会議中のファシリテーションがきちんと行われているのです。ファシリテーションの狙いは、メンバーの力を引き出し、合意形成をした上で、業務目標を達成することにあります。このスキルは、繰り返し実践することで必ず身につきます。

事例:2回の会議で新規企画のプロセスマップを作成する
あるインターネット関連会社では、新規事業として、デジタル出版サービスの具体化を進めていました。チームメンバーは5名。実現する出版サービスについて、1ヵ月で具体的な提案をしなければなりません。
週に2回のペースで3週間、会議を重ねてきましたが、なかなか納得できるサービス企画案になりません。アイディアはたくさん出ているのに、想定されるプロセスのバリエーションの数が多く、ビジネスとして考えた場合、コストも手間もかかりすぎます。だからといってプロセスを単純にすると、顧客の要望に応えられず、顧客満足度は落ちてしまうでしょう。チームリーダーは、メンバーの疲労感がたまり、モチベーションも下がってくるのを感じていました。
そこで、最近会議ファシリテーションの研修を受け、繰り返し実践している社員のひとりに、会議のファシリテーションを頼んでみることにしました。あと2回の会議で、何とか成果を出したいと伝えました。
ファシリテーターは、早速会議の事前準備にかかりました。まずはチームリーダーにヒアリングをします。「問題解決設計書」というシートに沿って、次のような項目を書き出していきました。
| この会議の目的は何ですか | 目的 | 「出版プロセスマップ(構想する→書く→編集する→公開する)を作成する」 |
|---|---|---|
| いつまでに、どういう状態になっていたいですか | 目標 | 「1週間後の11月20日までに、出版プロセスマップの最終版ができていること」 |
| 何をもって、目標を達成したとみなしますか | 成果物 | 「出版プロセスマップが完成していること」 |
| 目標を達成するにあたり、必須条件、障害になっていること、困っていることは何ですか | 前提条件 | 想定される出版の種類、販売方法の種類、アウトプットの種類を組み合わせると、莫大な数のプロセスがあり、絞りきることができない |
ヒアリングした情報を、ファシリテーターは事前に持ち帰って整理し、チームメンバーにメールをしておきました。これで、メンバーが次回の会議に来るときには、目的、目標、成果物のイメージを持って会議に望むことになります。メンバーも、具体的に問題が整理され、参加するモチベーションが戻ってくるのを感じていました。
第1回目の会議当日。冒頭でファシリテーターは、予定時間である3時間を、整理、関連付け、プロセス化に分けて時間配分し、メンバーの意見をききながら時間を修正します。
さらに、会議の目的、目標、成果物のイメージをホワイトボードに書き出し、ひとつひとつメンバーに内容を確認していきました。必ずメンバーの同意を得る、という合意形成スタイルで進めます。メンバーは、自分たちの意見がきちんと反映されながら会議が進むのを感じていました。
「残り2回の会議で、プロセスマップを完成させる」という共通のゴールに向かって、メンバーが自ら手順を決めました。ファシリテーターは、その手順に沿って、メンバーの意見を引き出し、ホワイトボードに図式化してまとめたり、ポストイットに書き出して整理します。煮詰まれば、視点を変える質問を投げかけ、議論を進めます。
こうして、1回目の会議が終わるときに、2回に分けて作成する予定だったプロセスマップが目標を上回る成果をあげて完成していました。でき上がったプロセスマップと、「次のステップ」が明確に記載されたホワイトボードを眺めながら、メンバー全員、しばし充実感を味わっていました。
メンバーのコメント
- 「今まで3週間悪戦苦闘していたプロセスマップが、3時間で、本当にできてしまうとは思わなかった。」
- 「今までも、みんなでホワイトボードやポストイットに書き出したりしていたけれど、今日はどんどん形になっていくのが驚きでもあり、快感だった」
- 「集中して頭を使ったから、結構疲れたはずだけれど、疲労感はなかった。むしろ充実感がある。意味のあるミーティングなら、参加して楽しいんだとわかった」
- 「一度手順を合意してしまえば、話がぶれて拡散しそうになったときも、ファシリテーターが上手く軌道修正してもどしてくれるので、無駄なく意見を出し合えた。」
- 「ここまで違うとは思わなかった。いつもの打ち合せがうそみたいだ。今まで我々は何をしていたんだろうと思った。ファシリテーターは司会や書記のようなものだと思っていたけれど、まったく異なる役割であることがわかった」
ファシリテーションは、「成果の見える化」と「会議の生産性の向上」を実現するものです。この会議の参加者自身、ファシリテーションの導入が、会議ばかりでなく、仕事の生産性を高めることそのものであることを実感したそうです。その後、この企業では、ミーティング・スタイルが変わっていくことになりました。